【ネタバレ感想】ショート・ターム 人は人に寄り添うことしかできない

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あらすじ

問題を抱える若者の施設「ショートターム12」そこでケアマネージャーをしているのが主人公のグレイス。同僚のメイソンは恋人で、公私共に仲を育んでいた。入所している若者は問題を抱え傷を負いながらも、グレイス達と日々寄り添いあってぶつかり合って暮らしていた。

ある日、ふさぎ込んだ女の子ジェイデンが入所してくる。自傷行為や振る舞いからグレイスはとあるシンパシーを感じ、距離を詰めていく。しかしジェイデンの父親が所定の日時を過ぎても施設に迎えに来ず、ジェイデンは大暴れして施設を飛び出してしまう。

同時に、グレイスはメイソンとの子供を妊娠していることも発覚し、母親になるのか決断を迫られる…

感想

同じ境遇の人間にしか介入できない部分

主人公グレイスはずっと立派な人間で、施設の若者にも信頼されていたし、彼氏とも素晴らしい人間関係・信頼関係を築いていた。なのにもかかわらず、子供が出来たことが分かり、同時に父親が出所することが伝えられると取り乱してしまう。彼氏を信じられたから一度は結婚と出産を快諾したのに

その後彼氏が何を言っても、どんなに親身な姿勢を見せてもふさぎ込んで回復しない。それだけの壮絶なトラウマであることをその後観客は教えられるが、彼氏はあの裏で茫然だろう。

これは新しく来た少女であるジェイデンも同じだ。一度大騒ぎして取り乱したとき、施設のみんながバースデーカードを贈りパーティーもして心底喜んだ。エンディングで壁に貼っていることから、この歓びが本心であったことは間違いない。なのにもかかわらず脱走してしまう。この行動に観客と施設の仲間は驚いただろう。あのパーティーでの表情は何だったんと。

そんな同じメンヘラ具合の二人は最終的に分かり合う。そしてお互いの建設的な行動を互いに促す。おそらく二人ともいろんな場面で嘘はまったくついていない。その場で純粋に正直に反応しているだけで、結婚承諾もパーティーでの表情も本心だ。

でも他人には癒せない部分がある。自分以外には介入させない領域がある。唯一入れたのが自分と同じ人間だけで、そんな人はめったに居ない。だからこそ最後お互いに大きな決断に至れた。

この映画が教えてくれること

この映画を観て思い出したのが、高橋優の『虹と記念日』って曲のこの歌詞

言葉並べたって意味がないこと 泣いてた君の隣で気付いた
痛み分け合えりゃどれほどいいだろうと 考えはするけれどいつも何も出来ない

僕もたびたび実生活でこの歌詞を思い出す。こんなに言葉を重ねているのになんにも癒せない。目の前の人の悩みに対して言葉以外アクションを起こせないのに、言葉が何の意味を持たない無力感。

でもそれが仕方のないことだとこの映画は教えてくれる。基本的に他人がその人の悩みに関与できない。その当人が開示してくれて初めてすこし貢献できるかもしれない。それでも本質的には本人の行動が変わることでしか解決できないから、実質無力だ。でもそれでいい。それが人間だと。

じゃあどうするのが正解なのか。間違いを犯した時に一緒に居ること、それだけだろう。劇中の彼氏は主人公が帰ってくるのをソファで寝て待ってるしかないし、それが正解だ。劇中終始逃げる子がいるが、その子を追って毎回一緒に走っている。それが正解なのだ。それを続けて本人が変わることを待つしかない。それまで一緒に生活を共にするしかない。

そんな人と人とのありかたを教えてくれた映画でした。

まとめ

名作であらすじも知っていたが、重苦しさ全開の映画と思い避けていた。全然そんなことなく、重さを持ちながら明るく振舞う懐深さが感じられる映画でした。

採点 74点

Bitly

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