あらすじ
アートギャラリーの女オーナーの主人公スーザン。ハイスペ夫を持ち上流階級としてステータス上はいい暮らしをしていた。しかし精神的には幸せとはいえない毎日。
そんなある日急に小説原稿が送られてくる。差出人は主人公が大学院時代に結婚した小説家志望のエドワード。精神的な弱さに失望して20年前スーザンから別れていた。
急に送られてきた小説は何なのか。見当もつかないが目を通してみると、そこにはスーザンの知らないエドワードが居た。どんどん引き込まれていくスーザン。同時に、再会を求めるようになっていくが・・・
感想
トムフォード舐めてた
ファッションデザイナーが自己満で映画作ってんだろ?ってぐらいの期待値だったのにね。良い意味で返り討ちに遭いました。
ごめんなさいトムフォードさん。あなためっちゃ良い映画お作りになったわ。
没入感という映画の一つのパラメータ
この映画で一番生じた感想は「没入感が凄い映画。凄すぎてカンストしてます」ということ。
あっという間にどころの騒ぎじゃない。始まってすぐ本題に入ってそのままグーーンよ。で、どうなるのよって見入ってたら、いつのまにかめっちゃオシャレな着地点。
まずストーリー自体の推進力がある。元夫が送ってきた小説から始まって、主人公の過去と小説と現在の3つの次元が連動して進んでいく。
現在の主人公はほとんど本読んでるだけなのに、気持ちの機微演出が秀でてるので次元を超える展開に深みが出る。
これは映画って舞台の良さだけど、トムフォードのカットバックが上手いよね。間と量とやり方。今作はめちゃくちゃ効果的。この映画の肝は次元が混ざり合って感受している主人公を、観客も同じ温度で感じられるか。その次元が混ざる部分のカットバックが良すぎて、この映画は傑作と言わざるを得ない。
トムフォードの画面構成があっぱれ
そのうえで半端ない没入感を支えているのは、さすがファッションデザイナーと言いたくなる画面構成。
基本おしゃれなセットや舞台で美意識を感じさせる。その上で真骨頂はストーリー上パワーがある要所での画面。大事なところでのシンプルでうるさくなく、展開上の大きなパワーをそのまま感じさせてくれる。言い方変えるなら観ていて力の入るシーンで、観たいものだけに集中できる気配りがある。周辺視野とピントが合ってる部分をフォーカスじゃなく画面構成で作ってくれる感じ。それでおしゃれなんだもん。さすが一流ファッションデザイナー!
小説の内容について
序盤はバイオレンス小説でなかなか送りつける意図が見えてこない。しかし進むにつれて小説と主人公の回想の両面から、筆者の性格と受けた仕打ちと感情の輪郭が見えてくるような感じがしてくる。でもここで大事なのは感じがしてくるだけで、核心を見せちゃってるかというとそうではない。
鑑賞後、元夫の気持ちを考えると面白くてしょうがないと思います。
まとめ
ちなみに僕は愛か復讐で言うなら、復讐以外の何者でもないと思います。
あの過去があるとね。
採点 87点
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