あらすじ
ちょっと短気なサラリーマンが、お家に帰る道中で世の中にキレまくるお話
感想
常人にはできない世の中へのキレっぷりをマイケルダグラスが怪演。どんだけキレんねんと笑っちゃうほどはちゃめちゃにぶち壊す。
でもそのトリガーとなってる出来事は誰しも日常で感じるイラッとするあのシーン。
日々生きていてハァ?となる時って多々ある。工事渋滞で全く進まず目的地に辿り着けなかったり、ギリギリで朝マックが食べられなかったり。
そのイラっは普通の僕たちはまぁ抑える。社会的動物だから。表面上は周りの目を、深層では秩序とか社会的安定とかしがらみがあって、爆発はなかなかできない。
でもこの主人公はもうぶっ壊れてもうてる。自分の中の正義のみしか行動指針が無くなって、思ったことは際限なく言っちゃう・やっちゃう。小さな破壊神と化すわけです。
その行動のオーバーキルっぷりはおいてといて、キレポイントは頷ける。キレる理由も分かる。だから観ていてこの破壊神キャラが、ただのフィクションだと割り切れない。誰しも憧れる部分がある。この破壊的衝動は。
劇中でも主人公と似た境遇のやつが出ててくる。
主人公の破壊行動に唯一気づき追うことになるのが、本日で定年退職となる内勤警官のおっちゃんだ。
この人の存在がこの映画をただの破壊痛快映画にしない深みを生み出す。
おっちゃんは今日で社会人人生が終わる。しかし内勤として警官っぽくないデスクワークのみを行い、同僚や上司から煙たがられている。定年退職なのに手荒い祝い方をされ、もはやバカにされてるようだ。仕事面ではそこまで立派なことをやったわけじゃない。
生活面では結婚して幸せな家庭を築いている…というわけでもなく、一人娘は2歳で病死。妻はなかなかのメンヘラで、妻が刑事職を心配し半狂気になるからと内勤を続けてきたほどだ。退職の日もはよ帰ってこいと叫き、定年後の住む場所も妻が決めておっちゃんはついていくだけ。
そんなおっちゃんの境遇は決して幸せそうに見えない。しかしおっちゃん自身はとてつもなく人格者。めっちゃ良い人。悪口を言わず気配りできて、弱者に寄り添える人。
境遇自体は主人公と大差ないと思う。主人公もなかなか不器用かつ恵まれない人で、こうなってしまうのもまぁ頷ける。しかしおっちゃんもさぞかし辛かろう。破壊という形で表に出る部分では180度違うが、それを生み出すエネルギーの部分では二人とも同等かもしれない。
そんな二人が対峙するクライマックスは深く悲しい結末を迎える。
何が二人を分けたのか。二人に本質的な違いがあるのか。考えさせられるし、主人公と観ている僕の違いはあまりない気がする。
また鑑賞後振り返ると、主人公は最序盤から人生を諦めていたのかもしれないとも思う。本質的なバカじゃなく、自暴自棄になった普通の人間だったんだなぁ。
まとめ
普通の観客と、あたまのおかしい破壊神主人公。アクションは違くてもマインドはあまり違わないのではないか。そう思えたので、けっこう面白かったです。
採点 79点
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