【ネタバレ感想】クーデター 旅先の違和感から始まる傑作サバイバル

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あらすじ

途上国の水道支援事業のエンジニアの主人公は、家族と共に異国に降り立つ。そこは事前情報とは違う低レベルの国。電話も新聞も不通、電気すらつかない。町を歩いてみてもなんだか違和感。住民の刺さるような目線から感じる、自分がここに馴染んでない強い異世界感。とおもっていたら暴動が勃発し、外国人が標的にされてしまう。家族と合流し戦場と化した異国から脱出できるのか…

感想

誰もが感じる違和感から始まる物語

旅行でも出張でも、見知らぬ土地に行ったとき違和感を感じるだろう。一種の恐怖感とも言える、どこかわからない・何がおこるのだろうっていうあの感じ。私も以前大阪旅行をした際、ネットの情報を友達と面白がって西成区に宿泊した。USJのお土産袋を持ったモロ旅行者のぼくたちと、今までに感じたことのない町の雰囲気の似合わなさ。別に何かされたり話しかけられたりしないのに、町はとっても臭くて暗かった。町が醸し出す雰囲気に違和感を覚えたのは初めてだったので、とても印象に残っている。

この映画は旅先の違和感・微かな不快感を丁寧に描写する。シンプルに電話がつながらないとか文化が違うってのもあるけど、町を歩いたときの自分がよそ者なんだと肌で分かる視線。なんだこいつっていう雰囲気自分が圧倒的マイノリティな場所に足を踏み入れてるんだと自覚せずにはいられないあの感じ。これが大変に良かった。

そこからシームレスに始まるクーデター普通に町で新聞買って歩いてたら、左から革命軍、右から機動隊がずらーと歩いてきて逃げ場のない状況。よくドッキリとかである「いきなりクローズ(ヤンキー作品)」みたいな状況。で開戦に巻き込まれる。そこまでは自分は他国人で第三者だったのに、警察が負けて外国人がターゲットになる。そして始まる逃げ場のない追いかけっこ。

「何かに追われて逃げる」までの描写がすごーく好みな映画でした。誰もが体験した旅先の違和感を映画で感じさせて、そこからそのまま始めてくれる。素晴らしい。

敵はゾンビじゃなくしっかりした人間

予告とかだけ見ると、相手は革命に狂った(主人公たちから見ると)殺人マシーンとして描いてくると思っていた。相手がゾンビだろうと悪魔だろうと何だろうと関係ない。ただひたすら主人公たちを付け狙う恐怖としての存在に徹するんだろうなと。

この映画は違う。自分たち外国人が襲われる理由を映画内では説得力をもって説明してくれる。実際のリアリティは置いといて、劇中一番信頼できるあの人の口から語られるので、本当はこっちが悪いんだと思ってしまう。そこまでずっと恐怖の殺人鬼から逃げてきたのに、あっちが正義だったなんて。ただの役割ハッキリ追いかけっこでは終わらしてくれない。これは素晴らしい。

向こうに正しい動機があったとしても、特に主人公たちの行動が変わるわけではない。展開上の意味は特にない。でも、このテーマで、相手を非人間のような悪魔として行くか、人間性を認めるかは映画の深みに大きく変わってくる。ただのサイコホラーではなく、「リアルな違和感を起点に、リアルな正義を信じた相手に追われるサバイバル映画」へと変えた。面白かったです。

最後逃げ切るシーンも、相手が人間で正しさを分かってるからこそのエンド。あれ相手がゾンビ的なマシーンだったらもっとぐちゃぐちゃでスッキリ終わらない。川の惰性で助かるとか、ストーリーに合っていて最後まで整った映画だった。

まとめ

隠れた傑作です。映画館で公開されてるとき観に行けなくてがっかりしてたけど、こんだけ良いならなおさら行けばよかった。

採点 88点

Bitly

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