あらすじ
証券会社副社長の主人公は愛する妻と二人の息子に囲まれ、上級国民としてまっとうな人生を送っていた。ある日たまたまガソスタでギャングの強盗事件に巻き込まれた結果、長男が殺されてしまう。犯人は捕まり法の裁きを受けるが、異様に軽い判決に納得がいかない主人公は、自らの手による復讐を実行する。その結果、ギャングによる復讐の報復を受けることになり、終わりのない戦争状態に突入していくのであった。
感想
人生の不公平さ・復讐の無常さを徹底的に演出する「皮肉さ」
この映画は核である「復讐」を際立たせるため、「皮肉だなぁ」って展開を徹底的に起こす。これは良かった。
- 主人公は証券のリスク管理を担当で日常に潜むいろんな危機に気を配っているのに、偶発的リスクによって子供を失う。
- 親切心から息子を殺す犯人グループの車が無灯火だと、事件直前にパッシングで教えてちゃう。
- 事件直前に主人公は息子に「俺はお前の誇り」って伝えるが、事件後釈放された犯人に向かって親分が同じことを言う。
ギャングとかけ離れた主人公が理不尽な困難に巻き込まれていく描写を何度もやることで、リスク管理のプロな主人公が様々なリスク度返しで「復讐」に向かっていってしまうしょうがなさを積み上げてくれる。観ていて苦しくなっていくけど、作品としてとっても大事なことでたいへんよかった。
それに拍車をかけるのが相手の反省して無さ加減。一言も謝らない。
元はお前らが100%悪い犯罪を犯して人殺してるからこんなことになってるのに、反省の言葉を一言も発さずに主人公へ“復讐”をしてくる。首謀者は「(息子を殺して主人公に殺された)ジョーを殺すなんてひどい話しだ」とか言って仲間の主人公への復讐の士気を上げてくる。意味わからんでしょ。むかつくわー。お前の殺しは何だったんだって話ですよ。論理的整合性の取れないあったまおかしい存在としての悪役が相手ってのも、主人公の泥沼感を際立たせる。
主人公の証券会社とギャングのアジトの対比も、泥沼に巻き込まれてる感が伝わってくる。上流階級で社会の成功者がどんどんダークな方向へ突き進み、それまでの生活が壊れていく様子。観てらんねぇきつくて。
極めつけはクライマックス。瀕死の主人公とラスボスが一緒のベンチに座り「俺たち同じだ。同類だぞ。」と煽ってくる。そして主人公は隠してた銃を取り出して打ち殺す。最終的に復讐は果たすんだけど、ちょっと向こうが上に立ってるように感じる最後までムカつく展開。きっついわ。
結局主人公は巻き込まれ生活を壊され続け、最終的に「復讐」って意志を貫くけど、相手を罰せられたかというと微妙なところ。っていう何ともスッキリしない終わり方。これが復讐というものなんだな。
やりたい展開を重視したストーリー
やりたい本筋の演出は良かったんだけど、それ以外の部分で無理やり感だったり足りない部分を感じた。悲しさは感じるけど、主人公の行動に納得したりはあまりできなかった。それは心理の葛藤があまり伝わってこなかったから。いろんな行動への心理的プロセスの描写が浅い。
主人公のいろんな行動が場当たり的な計算されていない印象を受ける。ますそれまでの人生を捨ててまで復讐を選択する描写がもうちょっと欲しい。それでいて最初の正義の復讐をするのにも、一般人なんだからもっと準備するでしょ。小さなナイフ一本でカチコミいかないよ。
相手から宣戦布告受けて家族と警察に正直に話すのは良いけど、主人公の対策浅すぎでしょ。その前に主人公自身が殺されかけて、反撃で一人殺してるんだから、相手の本気度合は分かるでしょ。なのになぜあまり対策をしないのかを入れてくれないと納得できません。結局家族が襲われてリベンジに燃える主人公がやりたいだけじゃんってなっちゃう。
まぁギャングサイドは観客には理解できない頭のおかしさってことで無理に納得してます。にしても人間とは思えんけど。
登場人物の行動を観て楽しむ娯楽が映画だけど、その動機と手段と結果に納得がいかないと観客は乗れない。意外な結果であっても、動機と手段がしっかりしていれば納得できる。意外な手段であっても、それを選ばざるを得ない理由があればオッケイ。動機が納得できるものなら、手段や結果がおかしかろうと好意的に見られる。
演技をしてる俳優を一人の人間として観させるのに必要な部分が、この映画には足りなかったです。
まとめ
展開と設定は悪くない。話の外堀の部分は良い演出だったので、一番大事なキャラの行動について甘かったのが残念。
採点 49点
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