あらすじ
6歳の弟が主人公。姉と母親の3人暮らしで、離婚した父親とも2週間に一度会う。そんな4人の進学や再婚、それに伴う人間関係の変化と成長。アメリカの一般家庭のふつうのホームドラマを、実際に役者も12年の時間を過ごして演じる。
感想
映画の可能性を広げる
2時間とか一定の時間内で、作品中ものすごい長い時間を描く作品はある。だれかの一代記とかなら、主役は劇中年をとる。撮影期間の分は実際に老化するがそれ以上にメイクや演技、演出でヨボヨボまで表現する。子供時代は別の子役を使ったりもする。それがフィクションであって、別になんの違和感もなく作品を楽しめる。
対してこの映画はフィクションとしての老化は無い。作り手が人間を老けさせずに、実際の時間で加齢した姿を使う。この実在感はすごかった。実際の年月の経過を映画に落とし込んで、観客はフィクションを感じない。
人は人を視覚的に判断するとき、無意識でとっても正確な答えを出せるほど優れた能力を持っているらしい。この映画をみると実感する。具体的な時間経過は提示されていないのに、肌の感じや佇まいで感覚的に分かっちゃう。なので劇中の展開に対し、実在の人間の行動を観てるわけだから、フィクションだと理解しつつも実際の話のように感じちゃう。そんな不思議な感覚へ観客をいざなう、新しい映画でした。
まるで身内の小さな甥っ子に対する感覚を映画序盤は抱いて、シーンが変わるたびに「久しぶりに会ったらこんなにデカくなったのか」って甥っ子に言う叔父さんの気持ちになる。後半は「お前もおとなになったな。あんなにちいさかったのに」って観客はよくいるおっさんになる。そんな映画。
新感覚を味わうものであって、面白くはない
ストーリーは何にも起らない。どこかに向かっていく推進力もない。あるのは人間の子供が大人に成長する過程のみ。誰しの心にもあるであろう、子供時代に経験したあの感情や出来事が全て入っている。
何かを新たに楽しむのではなく、自分の経験と重ねるノスタルジー映画。なんだけどそのジャンルとして完全無欠の作品。子供時代からの成長って最も大きな共通項を、映画の中に本物の人生を落とし込んで、本当の意味で人生を追体験させる。これが凄すぎるので、面白いとかじゃない。映画の新たな可能性を示した。
あとキャラのことを言うと、お母さんが子育て適正が無さすぎる人できつかった。自立って面では大学講師まで上り詰めたから凄いけど、母親としては失格でしょ。イーサンホーク演じるお父さんは逆に父親適正あるけど社会人としては微妙だったけど、良いパパだから新しい良い家族を築けた。そこの差がクライマックスで露呈して、妥当な結果だなと思いました。あとはおねぇちゃんのキャラがどんどん薄くなったのは残念。姉弟の関係が序盤はサイコーだったのに…
まとめ
しょうがないけど長い。興味が持続するかというと難しい。でも観て良かったなとは思いました。
採点 69点
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