【ネタバレ感想】満天の星 

ドキュメンタリー
2025年8月21日 名古屋シネマスコーレ

伊勢旅行の最終日、予定より早く名古屋へ移動。どうしても行きたかったシネマスコーレにて鑑賞。

あらすじ

1944年8月22日、学童を含む多くの命が奪われた「対馬丸事件」。長らく口外が禁じられてきたこの悲劇の詳細には、箝口令による徹底した隠蔽の歴史があった。生き残った元乗組員・中島髙男の孫である俳優・寿大聡は、祖父の体験に触れ、記憶と事実を後世に伝える使命を自らに課す。証言と旅を通じて戦争の理不尽さを描き出す、静かで力強いドキュメンタリー。

感想

想定よりも良かったです

旅行最終日に頑張れば名古屋で映画を観られそうだぞと計画を立てる際、この映画のレビューを見てしまいました。普段は、これから観る可能性のある映画のレビューは見ないことにしてるのですが、今回は迷ってしまい読んじゃいました。

見たレビューに低評価多く、不安いっぱいで着席しました。しかし、始まってみると一つの出来事を追うドキュメンタリーとしては最低限の見応えは確保されていて、言うほど悪くなかったです。

主演は実際に俳優を職業としている寿大聡さん。祖父が対馬丸事件の生存者で講演を行っていたが、生前あまり話を聞けなかったため、事件について調べていくドキュメンタリー。

90分弱の映画だが、始まって60分以上は対馬丸事件の説明ような感じ。内容は良くできた資料館のブースで流すべき資料映像。映画としては謎や挑戦が少ない気がして、ドキュメンタリーとして観客の気持ちをピン留めしきれてない気がした。

でも内容自体は深く心に来ました。劇中で寿さんも言っていたけど、実際の経験者の語りのパワーがすごくて。「まさに地獄」という被弾して船の先がえぐられて人が文字通り渦巻いている描写とか、こちらも言葉になりません。

生存者の方々が対馬丸事件をさまざまな角度から語る。その積み重ねで事件の詳細と悲惨さを寿さんと観客に伝える。その点は納得します。映画としては確かに微妙だと思いますが、事件を伝える方法として映画のフォーマットを使っているので、役目は果たしている60分。

最後の20分はやり方が正しくない

ただ、低評価問題は残り20〜30分です。

事件について知った寿さんは、後世に語り継ぐのが役目だと使命感に駆られる。しかし、語り部は実際に経験した人の滲み出る本気度が重要で、ただ知っただけの自分では伝わらないと葛藤する。

自分には人生を賭けてやってきた演じることしかないと考え、今まで接してきた事件の当事者を演じようと決意する。

その結果、亡き祖父のインタビュー映像を真似て演じる。祖父の気持ちを自分におろして、あのインタビューの内容を当事者の熱量で語るのであった。

これが問題です。映画として最後に何か着地点が必要かもしれませんが、この着地だけ足グネってる。

最後、演じることに繋がるのは分かる。俳優をやってきた寿さん、祖父が船員の寿さんだからできる形でこれからの子供達に伝えるんだと。けど、劇中でがっつり流したインタビュー映像を真似るのは、やっぱり難しいって。不謹慎な言い方かもしれないけど、パロディのように思えてします。すこし面白くなっちゃう。

だってここまで同じ熱量でインタビューを真剣に見てるから。頭に残ってるから。内容は正しくても、あのインタビュー映像自体を真似られちゃうと、元ネタが頭に浮かんで変な感情になっちゃう。素直に受け取れません。

やるならば、あの語られた内容を舞台で一人芝居するとかが良いんじゃないかな。“当時を振り返る”祖父を演じるのではなく、振り返っているその当時それ自体を演じたほうが、俳優経験を活かした伝え方な気がします。

事件時の祖父の素晴らしい対応を演じて伝えて欲しい。インタビューでの吐露でパワーを発揮するのは当事者しかできない。でも演じられるのであれば時代を超えて悲惨な事件をダイレクトに伝えられると思います。

まとめ

ウクライナに行く前の合唱シーンからの暗転で終えて、資料館で流して欲しい。それぐらい丁寧に事件と向き合っていて、事件の悲惨さをしっかりと知れました。

最初の太平洋戦争の描写なんであんなにコミカルなのかは永遠の謎です。そういうとこだぞ。

採点 60点

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