こんにちは。平田アルカンタラです。今回は大好きな映画です。
おはなし
南北戦争によって片足が不自由で、貧乏暮しの牧場主ダン。借金で街の有力者から嫌がらせを受け、その日の暮らしにも不自由していた。ある日、凄腕凶悪犯のウェイドが捕まり3時10分ユマ行きの列車に乗せることになった。ウェイドの仲間が救出のため襲ってくるであろう。それでも200ドルのために危険な任務に参加することにしたダンであった。
感想
ベン・ウェイドという男
この映画を語るうえで最も大切なのはラッセルクロウ演じる、凄腕ガンマンで仲間にも慕われているボスでありながら、様々な教養にも精通し人生に達観したベン・ウェイドだ。腕がよく強盗団のトップとして今まで数多くの人を殺し莫大な金を手に入れてきた。
そんな男がたどり着いた境地はニヒリズムだ。世界の全てを手に入れたから人間が金に弱いのを知っている。恐怖に弱いことを知っている。なので世の中こそ筋が通っていないことが分かっている。聖書や良心が偽善であることを読み取り、世の中に対して何も期待していない冷めきった態度を取っている。
ウェイドは輸送されている道中も人を殺しまくる。でも筋が通っていないかというとそうではない。ウェイドが一番正しいとも思える。正論を言ったとしても銃や金には屈してしまうのだから、世の中のすべてに意味はない。自分のなかだけの偏った正義によって殺人をしている他の奴らに比べたら、ウェイドのみが筋を通している。
道中ずっとウェイドは、他者の一見正しそうな発言を拾って「でも実際は違うだろ」と現実を突きつけてくる。そしてみんな現実に屈していく。所詮人間なんてそんなものってウェイドのリアリズムがこの映画を支配している。
主人公ダン・エヴァンスという男
クリスチャン・ベールが演じるこの映画の主人公ダン・エヴァンスは、徹底的な負け組だ。戦争によって足をなくし、牧場経営も借金まみれで、家族からなんの尊敬も受けていない。何も成し遂げていないんだからしょうがない。でもダンが悪いってわけでもない。すごくマジメで一生懸命な男。温厚で家族思いでそのためにプライドを捨ててもいい。
このダンこそが、ウェイドが大嫌いな「正義」を体現している。一生懸命正しい生き方をしている。なのに何も成し遂げていない、財産も全くない。ウェイドと比べると雲泥の差だ。主人公こそがウェイドの「世の中に正しさなんてない」ということの証明になっている。
ダンとウェイドが交わるとき
ウェイドはダンに徹底的に挑発する。「お前と結婚してから奥さん老けただろ。だって金ないもんな。おれだったらもっと幸せにしてやるのに」とか「欲しいのは金だろ。だったらマジであげる。お前の手柄ってことにもする。どうだ?」とか。それで人間が屈することは知っているし、ダン以外の人間は実際に負けてる。
でもダンは一切屈しない。終盤までは金のためだと言い、人一倍ウェイドを列車に乗せる任務の達成にこだわっている。終盤ダン以外全員いなくなって任務やってるのがダンひとりになったとき、ウェイドは金の提供をもちかける。任務以上に報酬をもらえ、明らかに条件は良い。でもダンは断る。断固として断る。
最終盤ダンはようやく語る。人生で何も成し遂げてこなかったと。家族からの軽蔑の眼差しに耐え、3年間神に祈ってきたが救われなかったと。脚の負傷も実は名誉の負傷ではないと。ウェイドが知っている「正しさなんて存在しない」そのものの人生を語り、だからこそ列車にのせなければならない。最後にひとつ成し遂げないといけない。そのために命を使うと。これは全て幻想に過ぎない世の中で唯一の正義である。
ウェイドは最終的にある形で応える。それは筋の通った男ウェイドだからこその行動だろう。ウェイドの考えは正しいが、それでもなお貫きたいものがある。最後まで持っていたいものがある。というダンの思いに対し筋を通したのであった。
これを観ると考えること
じゃあ俺は何に命をつかうんだろうって悩む。ダンのように今現在がどうってことは関係ない。いくら今が恵まれてなかろうが、次の1秒から何するのか。世の中で何が正しいか無視して、自分がどうするのか選び取らなきゃいけない。そして自分に筋を通す。それが必要だ。
まとめ
好きなので文章長くなっちゃったけど、マジで観たほうがいい。
採点 100点
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