あらすじ
NYの麻薬ディーラーとして生計を立てていた主人公モンティは、何者かに密告され逮捕されてしまう。7年間の刑務所生活直前の、最後の自由な25時間を描く。友人や父親、恋人と最後のやり取りをするなかで、それまでのわだかまりや誤解が解けていく。主人公は最終的にどんな選択をするのか…
感想
思っている以上に悲惨な現実と向き合うとき
気づいた時には自分の想定より悪い状況だったなんてことがある。思ってるより恨まれていたり窮地に陥っていたり。
この主人公もそうだ。麻薬ディーラーがクソな職業だと分かっていて、悪の世界に人間性までは染まっていない。職業として割り切って必死にやって、ハイレベルな生活と美人な妻が居る。信用できる旧友ともつながっている。良い生き方をして、自分自身も良い人間だ。
でもいざ刑務所行きで人生が終わることになり、ここまでの人生を清算しようとするとそれまで直視してなかったものが浮かび上がってくる。あれだけ良い人生を送っていると思ってたのに、それで隠してきたゴタゴタが突きつけられる。
これは劇中繰り返される911の描写と繋がってくる。2002年に作られているため避けては通れないテーマだ。おそらく911以前のアメリカは自分たちがハッキリ恨まれる存在だとは認識してなかっただろう。もちろん嫌ってる人もいるけど、世界平和に力づくで貢献してるし、世界を良い意味で引っ張るリーダーだと。
なのに911でハッキリ攻撃された。確実な大きな悪意がアメリカに向けられた。被害それ自体以上に、アメリカは驚いたのではないか。実はこんなに嫌われてるん?って。
そんな想定以上に泥沼な現実に対して、今作の主人公は少しずつ丁寧に接して紐解いていく。今日が人生で最後の日だとは思えないほど冷静に丁寧に接する。そして最終日の主人公ではなく周囲の人間が、追い詰められ閉塞した日々から助けられていく。25時間でこれまで関わってきた人間を救いだし、自分はタイムリミットを迎える。
ほとんど感情を出さない主人公エドワートノートンだが、根底には覚悟を持った愛が感じられてかっこよかったです。
再生への選択肢
聖人のように感じられる主人公には刑務所という地獄へのタイムリミットが迫っている。それに対してどんな行動をとるのか。これは911以後のアメリカにも通じることだろう。こういう選択肢も許されているということ。戦うことや甘んじて受け入れることじゃない選択をして、幸せになってもいい。そんなこれまでとは別の未来を許すエンディングだと感じた。
まとめ
ひとつ文句言うならちょいと長い。先生と生徒の展開はいらないから2時間に収めてほしかった。
でも冷静かっこいいエドワートノートンが最高なので許される。
採点 55点
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